!important #07 -伝えるデザイン、伝わるデザイン -に参加して

久しぶりにブログなどを書きます。
2018年2月3日(土)に開催されたセミナー、!important #07 - 伝えるデザイン、伝わるデザイン -のレポートです。


◎!importantとは?

2016年7月からウェブ制作者の知識の向上を目的して開催しているセミナーイベント。
参加者の多くが福岡県内の方である事から「福岡以外の方で業界最前線で仕事をしている方の生の声を聞きたい」という声を踏まえて、福岡以外の地域から登壇者をお招きし開催しているのが特徴のようです。

初参加です。

過去に6回開催されている!important。
いつも興味深い内容のセミナーが開催されていたのですが、スケジュールがあわず参加できていませんでした。
7回目にしてようやくスケジュール確保が出来たので参加する事ができました。

◎今回の講師はこの方

長谷川 恭久(はせがわ・やすひさ)さん

Web/アプリに特化したデザイナー・コンサルタントとして活動中。
組織に入って一緒にデザインに関わる課題を解決するといった仕事をするなど、チームでデザインに取り組むためにできることを模索している。
アメリカの大学にてビジュアルコミュニケーションを専攻後、マルチメディア関連の制作会社に在籍。
日本に帰国後、数々の制作会社や企業とコラボレーションを続け、現在はフリーで活動。
自身のブログとポッドキャストではWebとデザインをキーワードに情報発信をしているだけでなく、各地でWebに関するさまざまなトピックで講演を行ったり、多数の雑誌で執筆に携わる。
著書に『Experience Points』『Web Designer 2.0』など。

この方が長谷川恭久さん

著書やブログ、ポッドキャストはもちろんですが、ウェブ制作者向けセミナーイベント「CSS Nite」などに登壇されている事もあり、ウェブ制作に携わる方であれば知っている方も多いのではないでしょうか?
私は以前から長谷川さんのブログを読んだり、ポッドキャストを聴いたりしてますし、また、twitterもフォローさせていただいています。
なので「長谷川さんの生のお話が福岡で聞ける機会は貴重だ!」と申込受付開始後にすぐに申込をしました。

◎セミナータイトル「伝えるデザイン、伝わるデザイン」にこめられた意味

今回のセミナーは「デザインを伝えるためには?」という事に軸に置いているとの事。
例えば

  • 自分のアイデアが伝わらない…
  • デザインの重要性に気付いてもらえない…

これは、ウェブ制作に関わる人であれば一度は悩んだ事があるのではないでしょうか? 当然ですが、私も経験ありです。
これに対して長谷川さんは

  • 実は相手の理解が足りないのではなく、私たちの伝え方に問題がある可能性がある。
  • デザインを語るのは簡単なことではありませんが、黙っていては何も変わらない。
  • 見れば分かる・伝わると思っても実際そうはいかない。

とのこと。 だからこそ、デザイナーはクライアントの要望に応える成果物を作ることだけでなく、目的に沿った提案と説明ができる能力が必要になります。
そこで、セミナーを通じてステークホルダー(利害関係者)の潜在的ニーズを考慮したデザインの提案ができるようになるためのコミュニケーション術を、座学とワークショップの中で学びましょう。というのが今回のセミナーの紹介内容になります。

ポイントは「デザイン」のセミナーではなく「コミュニケーション術」を学ぶセミナーだという点。だから「伝える」と「伝わる」の二つの視点の言葉がセミナータイトルに記載されていたんですね。

─ ここからはセミナーを受講しての私の感想です

私の感想なので、実際の内容を正しく伝えているものではないのでご了承ください。

◎デザインの現在。

「伝えるデザイン、伝わるデザイン」という事ですので、「じゃあ、デザインとは何か?」という話になります。
今回は、参加者の多くがウェブ制作に関わる人という事で、アプリやウェブサイトの表面上のデザインがまず頭に浮かびます。
ただし「見た目のデザインを作る事だけがデザイナーの仕事ではない」というのは、多くの製作者の方が感じている事です。 そこで、長谷川さんから、デザインプロセスについてのお話がありました。

デザインプロセス

  • 調査
  • 定義
  • 課題定義
  • 模索
  • 実装

このように複数の過程が存在します。
ではその過程において、どのような事を実施するのか?という事も一部ですが説明がありました。

  • 調査:発散、インタビュー、データ収集、市場調査
  • 定義:集約、コンセプト、ペルソナ、ジャーニーマップ
  • 課題定義: 前のフェーズの結果を踏まえ、課題定義(※ここは私なりの解釈です)
  • 模索:発散、プロトタイプ、検証、イテレーション
  • 実装:集約、機能、ビジュアル、テスト

これらの言葉はウェブ制作者の方で「UX・サービスデザイン・HCD」などの知識ある方であればご存知の言葉です。
ちなみに、先述した「見た目のデザイン」の部分は実装の部分という事になります。
デザインプロセスの一部ですね。
私でいえば、仕事で制作に関わる事が多いウェブサイトは「ユーザーが実際に使ってみないと分からない」部分が多い事は事実です。
であれば、実装部分だけではウェブサイトが意図した成果を出す事ができるのか? うまくいくかどうかの仮説が立てられない訳です。 だからこそ、このような循環可能なプロセスが重要視されます。

このような説明の後に長谷川さんより、デザインの現在についての説明がありました。

デザインの現在

  • 制作より設計・コンセプト
  • 作ることに時間をかけ過ぎない
  • 模索を繰り返しながら進める

これも「UX・サービスデザイン・HCD」などの知識ある方であれば納得の事実です。
ただし、デザインの現在を踏まえ、上記のデザインプロセスにおける問題点のお話もありました。

調査

  • スケジュール・予算に入っていない。
  • 重要性が伝わらない

定義・課題定義

  • 課題共有してないまま進む
  • スケジュール・予算に入っていない。

模索

  • 学習ができない環境
  • 後戻りのコストが肥大する

実装

  • ウェブ制作者の仕事がココからになる場合がある。
  • 「そもそも」が共有されていない。
  • 様々な「しわ寄せ」を背負う事になる。

プロセスの中のステークホルダー

当然ですが、このデザインプロセスの中には「制作チーム以外」のステークホルダーが存在します。
長谷川さんは、一例として、「クライアント」と「代理店」の存在をあげています。
日本のよくある受諾案件だと、クライアントと制作会社が直接取引するのではなく、間に「代理店」が存在するケースは良く聞きます。
特に案件規模が大きくなればなるほど、この傾向は強いのではないでしょうか?
この「代理店」は「広告代理店」だけではなく「システム会社」「コンサルティング会社」「大規模制作会社」なども含まれるとは思いますが、ここでは「代理店」といえば理解できる方がほとんどだと思います。

◎プロセスの課題。

では、このデザインプロセスがスムーズに機能すればよいのですが、実際はこのような課題が存在します。

  • 実装しか関われない場合がある
  • 体制として難しい
  • 手段から入って空回り

ここで、長谷川さんが自身の経験も踏まえ、欧米と日本における違いをお話してくれました。

欧米と日本の違い

  • 作れるスキルは同じ
  • 日本の方が優れている部分もある

では何が違うのか?

それが

  • 代理店の立場が異なる

との事でした。 では代理店の立場が異なる事でどんな違いが生まれてるのか?

デザイナーがステークホルダーに対してデザインの説明をする機会が少ない。

ココなんだそうです。
日本は「代理店」がこの説明をする仕事を奪ってしまっているので「つくる」だけになってしまったとのこと。
たしかに、このような事実もあるのかもしれません。

なぜ、「つくる」だけになったのか?

高度経済成長の時代に大量の広告によるコミュニケーションで成果が出ていた時代であれば、デザイナーが多数のデザインを制作できるような仕組みも必要でした。
デザイナーが「制作」を、ディレクターがクライアントとの「コミュニケーション」を担当する分業制の仕組みですね。

でも、今の時代「顧客のニーズが多様化している」と言われています。
その結果、画一的なコミュニケーションでは伝わなくなってきました。
広告の世界でもマス広告の効果が弱くなっていると言われています。

だからこそ、ただ「つくる」だけでなく、ユーザーのインサイトを深堀して、自身が気付いていない問題を発見し、取り組むべき課題を作成・デザインする必要があります。
そうなると、前述のような「実装」以外のデザインプロセスが重要になります。
作ったものを自ら説明し、最適な手段を提案したり、考え方を伝えていく事ですね。
そのためには、デザインプロセスをスムーズに循環させていくための「コミュニケーション」が重要になります。
セミナータイトルにもある「伝える、伝わる」の部分ですね。
成果につながるデザインをしていくために、スキルとして「コミュニケーション」が大切だという事です。

デザイナーの仕事

ここでデザイナーの仕事についての説明がありました。

職人デザイナーの場合

  • 黙って良いモノを作る
  • 良いモノを作るためのスキルを磨く

ここでの問題

  • 良いモノを見れば理解できる
  • 良いモノを作れば理解してもらえる

人は、自分の経験や知識に基づき「当たり前でしょ?」「言わなくても分かるでしょ?」と無意識に前提条件にしている場合があります。 暗黙知等といわれるものです。

人によって解釈が違うという事実

デザインに関しても「良い」という概念は「人それぞれ違う」訳です。
今、外国の方にとても人気のあるものに「漢字のTシャツ」があります。
多分、日本人でファッション好きな方でも「漢字のTシャツ」って着ている人はほとんどいないのではないでしょうか?
仮に着ている人を見ても「あの着こなし、イイよね」なんて言う方は少なそうです。
でも、これが外国人の場合、漢字が「絵やグラフィックに見える」らしく、海外セレブが身につけたりしています。 極端な例かもしれませんが、その人自身の経験によって概念の解釈は変わってしまいます。

デザインを「言語化」する必要がある

人によって解釈が違うものになりがちなデザインこそ、「言語化」する必要があります。
成果物をカタチにするだけではだめだという事です。
そのデザインにどんな価値がある、どんな問題解決につながる取り組みなのか?
これを伝える必要があります。

自分の価値観だけで「言語化」してはいけない

ここで大事なのが、自分の価値観だけで「言語化」してはいけないという事です。
相手の状況や求めているもの、期待値や価値観などをしっかりと理解をした上で「言語化」してあげる。
相手の気持ちに寄り添い、「共感」を作っていく事にもつながります。

私の場合であれば、クライアントからウェブサイト制作の相談がきた際に、まず、クライアントのゴールを踏また上で現状を把握する。
その現状とゴールを結ぶ間にある問題が何か?を共有する。
その上で、問題解決につながる取り組むべき課題は何か?を定義する。

デザインは問題解決というのは有名な言葉ですが、このようなプロセスを繰り返すからこそ、問題解決のための課題定義やデザインが可能になるのだと思います。

そして、そのためには何かカタチにする能力だけではなく、言語化する能力「コンセプト策定力」が重要なんだと改めて思いました。

◎批評と批判

クライアントと意図を共有し、問題解決や課題定義のための会話をする上で大事な事が、「批判」をしない事だそうです。
「批評」と「批判」は似たような意味の言葉ですが、微妙に違います。

批評と批判の違い

広辞苑で調べると

  • 「批評」は物事の真偽を判定すること
  • 「批判」は物事の是非について評価し論ずること

と記載があります。
要するに、自分の意見で「判定」してしまうのではなく、相手のアイデアや発想を「評価」し意見や見解を述べ「対話」をする必要があるという事です。

フラットな発言ができる「場づくり」が重要

「批評」や「対話」ですが、相手との関係性などによっては難しくなる事があります。 よく、会社の会議等で上司が

  • 何でも自由に発言してOKですよ〜

なんて言う事がありますが、実際は様々な要因があり、部下としては中々発言できません。
だからこそ、まずは「話せる場づくり」が重要です。
自分もファシリテーションの勉強会を主催していますが、もっと「ファシリテーション力」は身に付けていかないといけないと感じました。

◎ワークショップ

色々と座学を通じて知識をインプットした後はワークショップを通じてのアウトプットです。


ワークショップは楽しいですよね


ワークショップのお題

お題は「ステークホルダーにデザインに関わる課題を理解してもらい、採用する価値があることを伝える」でした。
個人的な意見ですが、ワークショップは楽しいです。
インプットしたものを一気にアウトプットするので学びの質が深まるのが良いなと思っています。

ワークショップの目的

  • 決済者の立場を考慮したアイデアの提案
  • 様々な視点の共有
  • 成果物よりプロセスを重視

このようなワークショップの場合、成果物にフォーカスしてしまい、スムーズに進まない事もあります。
今回ご一緒させていただいたチームの皆様は、ワークショップに慣れている方が多いのか、とても優秀な方でアウトプットも多かったです。
結果、かなりスムーズにワークショップを進めていく事ができました。

聞き手のマインドセットを整理する

今回のワークショップでは、企業のCMO(マーケティングの責任者)にユーザー調査を提案する事にしたのですが、提案の前にCMOの方のマインドセットを下記の3つの視点で整理し、提案を考えました。

  • 優先順位
  • 圧力
  • 報酬・見返り

マインドセットとは

マインドセットとは、人の考え方の基本的な枠組みです。
CMOの方のマインドセット次第で、ビジネスにおける意思決定の重要なポイントが違うわけなので、まず、ここを明確にしていきました。
実在の人物ではないので、想像する部分は多くなりますが、配布いただいているプロフィールや、グループメンバーが感じているものをアウトプットし、共通ポイントをまとめ、上記の3つの視点でマインドセットを整理していきました。
このような、合意形成をとるプロセスはそれこそ、デザインプロセスにおいて大事な事です。
CMOのマインドセットを考える中で、グループメンバーのマインドセットについても考えたりする事もでき、ワークショップの目的でもある「様々な視点の共有」や「成果物よりプロセスを重視」を実感する事ができ、とても良かったです。


こんな感じでアウトプットしました

発表内容もこんな感じで整理しました


最後は発表

ステークホルダーのマインドセットを踏まえた提案方法などを考えた後は、グループ毎に発表です。
発表で面白かったのは、同じテーマでワークショップを行っているチームでも、ステークホルダーのマインドセットの仮説が違うため、提案内容が全く違います。
この点もワークショップの目的である「決済者の立場を考慮したアイデアの提案」「様々な視点の共有の重要性」を実感する事ができ、とても良かったです。


模造紙に隠れているのが私です。。


◎最後に

久しぶりにウェブ制作関係のセミナーに参加をしました。
個人的にセミナーは学ぶだけでの場所ではなく、自分が今まで学んだ事の答え合わせをする場所だと思っています。

学んだ事を実践し結果につなげていくのがプロです。 そのためにも、「インプット」と「アウトプット」を繰り返す必要があると自分が考えています。
「アウトプット」も、現場だけでなく、「専門家の知見」と比較することで、自身の現状を把握する事ができます。
そうする事で今の自分に足りないものも見えてきます。
そんあ事実を踏まえて、足りないものは「インプット」していく。
自分はそんな風にセミナーを活用していきたいと考えています。

今回の「!important #07」はセミナーの内容はもちろんですが、運営の方の対応も素晴らしかったです。 何より参加者の方の質が高くてホントに参加してよかったな。と思っています。

もし、このブログをみて「!important」に興味をもった方は是非、公式サイトにアクセスしてみて下さい。 過去開催のレポートなども掲載されているので、セミナーの雰囲気などもつかみやすいです。
もちろん、私も次回以降も関心のあるテーマのセミナーであれば、是非参加をしたいなと思っています。


最後はみんなで集合写真撮影。ワークショップと発表終わった後なのでいい雰囲気で撮影となりました。

最後に講師の長谷川さん、運営の皆様、セミナーでご一緒させていただいた皆様へ。
とても学びのある、有意義な時間を過ごす事ができました。
また、どこかでご一緒できる日を楽しみにしております。
ありがとうございました。

◎関連サイト一覧

◎記載を忘れていましたが懇親会も楽しかったです

セミナーといえば、やはり講師と参加者で交流できる懇親会を忘れてはいけません。
これはもう、セミナー本編と同じか(それ以上?)に楽しい時間でした。


美味しい食べ物と飲み物があると自然といい「場」になりますよね。懇親会大事です。

最後に:セミナ開始時の自己紹介について

そうそう、私が長谷川さんに懇親会で質問した事があります。

長谷川さんが今回のセミナーで講師をするに当たりお金以外で得られたものって何ですか?

この質問に対して長谷川さんは

最初に実施した参加者全員の自己紹介の内容ですよ。

毎回同様のセミナーを開催する時には自己紹介をしっかり観察し情報として持ち帰り、今後のセミナーや仕事等に活かしているんだとか?
自己紹介でその方のマインドセットが分かるのは確かだし、訓練にもなりますよね。
なるほどー。と思った次第です。


投稿者